脂肪はそのまま定着しない?
もう大分前からですが、脂肪の移植って、
”入れた脂肪がそのままそこで定着しているだけではない!”
ことが、実験結果などから知られています。
ですがこの割合、果たして注入した脂肪(ドナー)のどれくらいの量が残って、どのくらいが再構築される(レシピエント)のか、
その時活躍する細胞はどこから来るのか?
など、まだまだ基礎研究の進展を待つしかないです・・・。
では再構築される時の中心になる細胞は一体どこから来るのか・・・?
自分が予想するに(笑)、腹部や大腿部などの脂肪組織からかなー?と。ここの脂肪由来幹細胞が、胸の移植した部分に、血流に乗って飛んでくるんですよ!多分!
これは細胞の”ホーミング”といって、白血球が細菌感染した部位とかに集まってくるのと同じ感じです。
身体の幹細胞は、炎症が起きて傷の回復が必要な部分に、この白血球のように集まって来て、傷の修復をしているらしいんです!
これを実際に利用したものに歯髄幹細胞治療というのがありますが、それは他人の歯髄幹細胞やその成長因子を、治療したい病巣部に入れるます。そうすると、それ自体は3週間くらいで消失してしまうのですが、それで組織の修復が出来るらしいんです。
あくまで注入した脂肪(ドナー)に混ざっている幹細胞は、修復が必要な部分を教えるシグナルの発生役でしかなく、ずっとそこに幹細胞がいなくていいらしいんです!あくまでトリガーなだけ!
だから注入する脂肪には最低限の幹細胞さえいれば事足りる!=注入する脂肪に幹細胞を足しても、あまり定着率が良くなるわけではない・・・。
脂肪由来幹細胞は、いろんな組織に分化するからドナーに多い方が有利なはずですが、実際臨床的には役に立っている感じがしないです。
また、これは以前、
脂肪吸引のついでに脂肪豊胸すると、通常の脂肪豊胸の時より成績が悪い気がする、
一度に脂肪細胞をたくさん取っておいて冷凍保存しておくと成績が悪い印象がある、
というのと理論的に矛盾せず、それはフォーミングしてくるべきレシピエント側の幹細胞が枯渇してしまうのが原因だという仮説が自分の中にはあります!
今回も難しい話で恐縮ですが、結論は
①脂肪豊胸は、注入した脂肪(ドナー)だけがそこに残る訳ではない
②身体(レシピエント)の他の部位からの幹細胞がホーミングして飛んでくる方が、注入脂肪(ドナー)に混ぜるよりも脂肪豊胸の成績には重要かもしれない
③この仮説が正しいと(実際にそうですが!)、冷凍保存用を含め、一度に大量の脂肪吸引をするのは、脂肪豊胸の成績を上げるには好ましくない
ということですね。あくまで現段階の自分の考えですが、外れてはいないと思います!
このブログを執筆したドクター

銀座3丁目・BANNAI美容クリニック 院長
坂内 誠
保有資格
医学博士/美容外科専門医経歴
-
1995
新潟大学医学部医学科卒
新潟大学医学部附属病院 外科勤務 - 1997 新潟大学医学部大学院外科学1入学
- 2001 同上卒 医学博士取得
-
2006
大手美容外科入職
都内大型院の院長を務め、グループ内の年間脂肪豊胸手術件数全国トップを毎年記録 - 2020 銀座3丁目・BANNAI美容クリニック開設 院長に就任