COLUMN

〜医師監修〜脂肪豊胸に関するコラム

豊胸術のしこりについて

しこりとは?

ところで、しこりって一体、どういうものかわかりますか?

一般的に皮膚の上から触って、なにか ”硬いもの” を触れる場合、”しこり”といいますね。

ただ豊胸術のしこりの場合、中まで硬いものは稀で、大体はしこりの表面が石灰化などで硬くなっていることが多いです。

このように、

内部が異物(自分以外の成分)で、周りに被膜が出来て硬くなっているものが、”しこり” 

ですね。

しこりの種類には、放っておいてもいい良性のものと、手術など治療の対象となる悪性のものがあります。

それで豊胸術のしこりの場合、乳がんとの鑑別が必要になりますが、どんな豊胸術でしこりが出来ることがあるのか?またしこりを除去する方法は?鑑別は容易か?などについて解説しますね。

残念ながら、しこりの可能性がゼロの豊胸術は存在しない!

”しこりは嫌!”、”しこりは怖い(?)”というものの、絶対にしこりが出来ない豊胸術というのは、残念ながらこの世には存在しないのです。

”あれ?シリコンバック豊胸もしこりが出来るの~?”

という疑問もあるかもしれませんが、順に解説していきましょう。

①ヒアルロン酸豊胸のしこりと、その除去について

美容外科歴15年ですが、一番しこりが出来やすいイメージがあるのがヒアルロン酸豊胸ですね。

実はヒアルロン酸豊胸の注入の仕方には2パターンあって、①しこりのリスクを減らすために分散して注入する方法と、②一塊にして注入する、という方法があります。

①の分散して注入する場合、米粒~大豆くらいの小さめのしこりが出来ることが多いです。

その場合ヒアルロン酸溶解剤で溶ける可能性が大きいですが、時間が経って被膜が厚く出来ている場合、デコ―ガイド下などで、しっかりと内部に注射しないと上手く溶けないこともあります。

②の場合一塊にして注入していますから、それこそ梅ぼし~テニスボールくらいの大きさのしこりが出来ます。

この場合はヒアルロン酸溶解剤だけでは足らず、同時に吸引する必要もでてくることがあり、そうすると局所麻酔だけでは出来ないこともあります。

また、ヒアルロン酸溶解剤でうまく溶けたとしても、出来てしまった被膜はずーっと残りますから、その後に脂肪豊胸を使用と思っても上手く伸びなかったりすることもあり、一度注入した傷跡は消えることがありません。

その他にも色々な理由もあり、昨年(2022年)秋には

学会から事実上のヒアルロン酸豊胸の禁止勧告が出されています

ので、いずれにしろヒアルロン酸豊胸は止めておいた方がいいです。

また乳がんとヒアルロン酸のしこりの鑑別は難しくないはずですが、注入の仕方によっては乳がん検診自体に支障をきたすことは時々聞きます。

②シリコンバック豊胸のしこり発生率は、なんと100% !?

シリコンバック豊胸でしこり

って、どういうこと?

となると思いますが、自分も海外の大御所ドクターに言われる前は気づきませんでした💦

しこりは小さくて硬いもの、という固定観念があったせいなのですが、先程コメントした通り、

自分以外の組織があると、その周辺に被膜が出来て ”しこり” となる

わけですから!

つまり

シリコンバック豊胸というのは、中身がシリコンバックという大きなしこりが左右の胸に1つずつできる手術

なのです!

ですから、

”脂肪豊胸はしこりになるのが怖くてシリコンバック豊胸にした”というのは、とても変な話

なのです!

脂肪豊胸は上手に注入すればしこりは出来ませんが、

シリコンバック豊胸はそれ自体がしこりになりますから、しこり発生率100%の手術ですし、

最近はBIA-ALCLやBIA-SCCという発がん性も報告されているので、良性のしこりどころではなく、もっとやばいです。

この意見は、アメリカの脂肪注入豊胸の権威といわれるドクターの受け売りですが、確かに自分も同意見です。

ですから自分が脂肪豊胸専門クリニックをしているのは、唯一オリジナル3D注入法で美乳をつくれることもありますが、脂肪豊胸手術は悪性化することが絶対にないから!なんですね。

それでシリコンバック豊胸のしこり=シリコンバックと乳がんの鑑別は一目瞭然ですが、マンモグラフィーなどの乳がん検診は受けにくくなりますね。

③脂肪豊胸手術のしこりと、その除去について

脂肪豊胸も、気をつけていても多少はしこりが出来ることはありますが、まず大前提として”良性”なので安心です。

しこりの原因は、①脂肪の注入し過ぎ、②脂肪の一塊注入、③不純物除去不良、などで、脂肪が定着すればしこりにならず、定着しなかった脂肪がしこりになるわけです。

不純物をしっかり除去した脂肪を注入したのであれば、

しこりが直径5㎜未満であれば触ってもわからないオイルシスト(定着できなかった脂肪の油滴)で、それ以上のサイズで数㎝程度のものなら注射針で吸引除去可能なことが多いですね。

それ以上大きいものや、不純物が多く石灰化が酷いものはしこりの内部次第で吸引できるか、それでもダメなら切開して摘出することになるかもしれません・・・。

よって作らないようにするのが一番いいので、

①片胸の注入量のチェック(片胸250cc以上は明らかに入れ過ぎしこりが出来て当たり前で、場合により脂肪壊死を起こす)、

②ドクターの脂肪豊胸手術の経験(経験豊富であれば無茶しないし、しこりも対処できる可能性も高い)、

③脂肪の処理の仕方(ピュアグラフトやコンデンスしているだけでは不十分)

をカウンセリングでしっかりとチェックするのがいいでしょう。

なので自分は最近特に、脂肪の注入量をいかに抑えるか?に尽力しており、

今年(2023年)に入ってからは注入量が片胸170cc前後で、以前(片胸210cc前後)と遜色ない結果を出せるようになりました!

バストを大きくするのに定着できる限界以上の脂肪が、油滴(オイル)になったりしこりになる訳ですから、注入量を少なくても大きく出来るというのは凄いことなんです!

定着限界量きっかり注入して、ほぼすべて定着できるというのが、しこりのリスクを最小限にできる究極の理想形です!

乳がんとの鑑別ですが、こちらも特段難しくなるようなものではありません。

また、脂肪豊胸のしこりについては、こちらの記事もどうぞ。

しこりではないけれど…。定着しなかった脂肪が吸収され残ってオイルシストで残った場合、その体積は何cc?

まずオイルシストの体積を想定してみましょうか?

直径4ミリ(半径2ミリ)のオイルシストが球形だと仮定した場合、その体積は

4/3 × π × r × r × r より、4/3 × 3.14 × 2 × 2 × 2 ≒ 33.5 m㎥ = 0.0335 c㎥

たったの 0.03cc !

これは大体、1滴のしずく程度です。

仮に脂肪を200cc注入して定着率が50%だった場合、残りの100cc程度がオイルになり吸収されますが、

この100ccのうち、たった水滴1滴分が吸収され残っている状態が、4ミリのオイルシスト

ということになります。

これ、気になります? しこりでもないし、放置してもなーんにも悪さもしないし、いずれ吸収される可能性も高いのに!

言い方を変えると、

99.997%が吸収されても、わずか0.03%のオイルが吸収され残っても気になる

ということでしたら、残念ながら

豊胸はしない方がいい

です…。これはしこりではないですし、現段階でしこりが100%出来ない豊胸手術は存在しないので!


話を元に戻して、オイルシストが直径6ミリ(半径3ミリ)だとすると同様に、

4/3 × 3.14 × 3 × 3 × 3 ≒ 113 m㎥ = 0.113 c㎥

水滴3〜4滴分となり、


直径8ミリ(半径4ミリ)だとすると、少し大きめですが

4/3 × 3.14 × 4 × 4 × 4 ≒ 268 m㎥ = 0.269 c㎥

水滴8滴分くらいということになります。


直径6ミリくらいになると、浅い層にあれば触れるから気持ち悪いし、放っておいても吸収もされにくいですから、その場合は太めの注射針で吸引した方がいいでしょう!(つまり簡単に除去できます)

豊胸術のしこりについて まとめ

①ヒアルロン酸豊胸のしこりはヒアルロン酸溶解剤で溶けることもあるが、確実に溶かせるわけではない。

②シリコンバック豊胸は、実はしこりをつくってバストアップする手術で、しこり発生率100%。

③脂肪豊胸のしこりは原則良性で心配がないが、しこりが出来るか出来ないかはドクターによりピンキリ。

定着しなかった脂肪の99.9%が吸収されても、0.1%が残存してしまえば直径5〜6ミリのオイルシストになることがありますから、これが気になる人は脂肪豊胸に向いてません。

以上極端に怖がらず、正しい知識をつけて豊胸手術を受けましょうね!

このコラムを監修したドクター

院長 坂内誠
銀座3丁目・BANNAI美容クリニック 院長 坂内 誠

保有資格

医学博士/美容外科専門医

経歴

  • 1995 新潟大学医学部医学科卒
    新潟大学医学部附属病院 外科勤務
  • 1997 新潟大学医学部大学院外科学1入学
  • 2001 同上卒 医学博士取得
  • 2006 大手美容外科入職
    都内大型院の院長を務め、グループ内の年間脂肪豊胸手術件数全国トップを毎年記録
  • 2020 銀座3丁目・BANNAI美容クリニック開設 院長に就任

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